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ES細胞捏造問題とは
今巷を賑わせている「ES細胞捏造問題」とは何なのでしょうか?簡単に言うと韓国のソウル大の黄禹錫(ファン・ウソック)教授らのグループが今年5月、科学誌サイエンスに捏造論文を発表していたという話です。

偽装や捏造、最近の日本でもホットな話題ですよね。論文捏造問題自体は実はそう珍しい話ではありません。以前にもアメリカのベル研究所で捏造が発覚して大問題になりました。サイエンスやネイチャーなどの格式が高い論文誌は読者も多く、同じ分野を研究しているものにとっては興味の的になるわけですから不正を行なっているとすぐにバレちゃうわけです。 

自分も専門分野の論文雑誌は良く読むのですが「絶対にこれウソだろー」というものに当たる事もあります。論文の真偽如何は結局のところ研究者のモラルにかかっているわけで、極端な話ゼロからでもウソの論文を書く事は可能です。もちろんそんな事がまかり通ってはマズいので論文誌には掲載の是非を決める「レフェリー」がいるわけですが、でもこれもウソをつき通せば審査をパスできる抜け道もあるという事は事実です。世界を揺るがすような大発見をした研究だとしたらキチンとその実験が「再現性」があるかどうか(←重要です!)審査員のいる前で実験をしてくれなーんて事もあるかもしれませんが、現実は毎日のように投稿されてくる論文の処理だけで手一杯なわけです。

では今回のES細胞の一件はなぜここまでの騒動になっているのでしょうか。それはこの研究内容である「ES細胞」と韓国のお国事情にあります。
黄教授らのグループが行なった研究内容についてまず説明したいと思います。

ES細胞とは授精した胚(受精卵)から取りだした胚性幹細胞の事であり、 神経や筋肉、骨などさまざまな組織に分化する能力を持つ事から「万能細胞」とも呼ばれています。このES細胞は特に再生医療の分野で注目されていて、仮に技術化が成功すればあらゆる臓器を作り出す事が可能となり慢性的なドナー不足という問題は一挙に解決されます。 
 
しかしこのES細胞から作られた臓器は移植される患者の方にとっては「他人」の臓器であり当然拒絶反応が起こってしまいます。この問題を解決したというのが黄教授のグループであり今回のサイエンスでの研究報告となります。具体的には、患者から体細胞を取り出し提供された卵子と融合、すなわち患者と全く同じ遺伝情報を持つ「クローン胚」を作りそこからES細胞を取り出しその培養に成功したという事です。こうなればこのES細胞から作られた臓器は患者と同じ遺伝情報を持つわけですから拒絶反応は起こりえません(突然変異が起こらないという仮定で。以前に書いた記事を参照)。まさに画期的な技術といって良いでしょう。これまで人間のクローン胚からES細胞を取り出し培養に成功した例は無く黄教授らのグループが世界初となったわけです。

このES細胞に関する研究は生命倫理問題という大きな壁があります。ES細胞を取り出すという事はその受精卵を「殺す」という事に繋がりますが、果たして受精卵はヒトなのかそれともヒトではないのか?その他にもクローン胚を作るという事はクローン人間を作るという事と同義ではないのか?など、ES細胞研究の第一人者であった黄教授は常に世界的な世論の渦中の人物でもあったのです。

もうひとつこの捏造問題がここまで大きくなった理由の一つとして韓国のお国事情があります。黄教授らのグループがES細胞研究のフロンティアとなっているのは国の多大なる後押しがあるからという事は否めません。世界的にはこのES細胞の研究は倫理問題の観点から規制の傾向にあり、日本でもつい最近になって「難病治療目的に限定」してヒトクローン胚の作成が容認されました。韓国政府はそれこそ「国家事業」として黄教授の研究を支援、その額は一国の政府が研究グループに支援するお金の額では史上最高という事。いかに韓国政府が黄教授の研究に期待をかけていたかが分かると思います。

世界的な倫理問題が吹き荒れる中でなぜ韓国政府はES細胞研究に多額の支援をしたのか。その理由として韓国は科学分野での発展の遅れを取り戻したかったという事が挙げられると思います。お隣日本では科学分野でのノーベル賞受賞者の人数は歴代で9人となりますが、韓国では未だに出ていません。日本を含めた欧米諸国に少しでも早く追い付きたいという強い想いがあったのでしょう。実際黄教授はノーベル賞候補として挙げられていました。捏造が発覚するまでは・・。

国家的なプロジェクトが捏造だった。この事実は韓国国民のみならず世界中を驚愕させました。黄教授はES細胞は実際に存在するとした主張を譲らないそうですが、もし仮にそうであったとしても一度失った信頼はそうは簡単に回復はしません。今後しばらく韓国からノーベル賞候補が現れる事はないでしょう。それほどまでに重い罪を犯してしまったのです。

この捏造問題に関しては国内でなぁなぁで済ませるのではなく、他国の調査員を派遣して徹底的に究明してほしいものです。このような論文を通してしまったサイエンス側にも責任の一端はあると思います。掟破りだとは思いますが今回の論文をジャッジしたレフェリーを公開するくらいはした方が良いのではないでしょうか(普通は非公開)。仮にも科学分野で最も権威のある雑誌の一つなんだからそこら辺の落とし前はしっかりつけて頂きたいものです。

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黄教授の捏造事件に関しては現在も話が進行中なのでこれからもしっかりと見ていきたいと思います。

[追記 06/1/10]
黄教授が世界で初めてヒトのクローン胚からES細胞の培養に成功した2004年のサイエンスの論文も「捏造」だったと調査委員会の発表がありました。これで黄教授のグループにはヒトのクローン胚からES細胞を作製する源泉技術は無かったという事が立証されました。

「サイエンス」の分野に限っていえばひとまず決着を迎えたと言って良いでしょう。卵子提供などに関しての倫理問題、研究費の使途不明金の追及などまだまだ問題は山積みですが、今後の科学の発展に壁を残さない為にもここで全て「膿」は吐き出して欲しいと思います。
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テーマ:国際ニュース - ジャンル:ニュース

【2005/12/18 10:31】 | かがく | コメント(0) | page top↑
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